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2020/06/15 10:41

大岡昇平 池澤夏樹編・日本文学全集

事実に重きを置いたまっすぐ透明な眼差しで、戦争や恋愛の激烈な状況を書き続けた小説家、大岡昇平。本巻には、中産階級の恋愛と没落を描いた「武蔵野夫人」や、『俘虜記』収録の戦争小説「捉まるまで」の他、昭和天皇の重篤に際して書かれたエッセイ「二極対立を生き続けたいたわしさ」などを収録。人間の心理を曖昧にごまかすのではなく、できるだけ明確に追い続けることで近代人たらんとした大岡昇平、今だからこそ読んでほしい。



日本を代表するフォークシンガー・友部正人が詩人の殿堂、現代詩文庫入り…!「大阪へやってきた」や「一本道」という、初期の友部を代表する曲の詩を掲載した詩集、『おっとせいは中央線に乗って』の全篇を収録している他、「おちんちんしぼり」といった近年の作品まで網羅している。「中央線はおでんに似ている」といった、友部正人のエッセイも充実。友部正人についての谷川俊太郎の詩や、矢野顕子の小文なんかもイカす。



精神科医として、患者を治療するということを考え抜いたことで、整体や気功まで覚えてしまい、最終的にはガンまで治す事ができるという(!?)伝説の医師、神田橋條治。患者とのコミュニケーションをする上で、言葉だけ、説明だけで理解するのではなく、その患者の身体の状態や雰囲気、要するにフィジカルな部分を観察し、総合的に判断していく方法を開陳している。

言葉の内容だけで考えるコンスタンティブな考え方だけでなく、これを言ったら患者さんはどうなるのか、あるいはこういうことを言う患者さんというのはどういう状態なのか、ということを考えるパフォーマティブな視点を持っているという意味ではデリダのような現代哲学とも通じる。あるいは、一定の環境の中で相手がどういうことを言ったり、行動したりするのか、ということを聴いたり観察する技術は、音楽の即興演奏にも通じる技法でもある。文化的生活を営む全ての人間に読んでもらいたい…!



精神科医として患者のことを考えた果てに、ついにどんな病気をも治してしまう(!?)ようになった、神田橋條治。本書は神田橋先生の著作の中でも治療、治癒に対するエッセンスが凝縮されている。
生命の進化の一形態として誕生したヒトは、ことばを持ち始める。そのことばはファントムとなり、動物としてのからだに指示をしたり、場合によっては支配してしまうようになる。病気や不調の原因は、ファントムとからだの不調和、ファントムが思いこんでいることと、からだが示している反応、からだの言うことが違うことが原因である…など。
治療、治癒論としてだけでなく、ことば論、小説論、芸術論としても読める、名著。この本は、ことばの喜びと怖さと向き合う全ての人に読んでほしい…!

また、私が主催する読書会の模様をお届けしたジンがありまして、それはなんと、この本が課題図書なんです!こちらも見て行ってください!↓
https://noguchido.theshop.jp/items/29066512

前半ページに線引き小。



長年建築雑誌の編集長を勤めている植田実が、『トムは真夜中の庭で』や『家なき子』『ナルニア国ものがたり』『ゲド戦記』といった誰もが知っている児童文学や、漫画家の滝田ゆう、作家の安部公房といったコアな物語まで、計32作を彼の視点で紹介している。そう、その視点は建築。その物語の中に、実は描かれている建物や、実際に建築としては描かれていないが、確かにその物語に存在する空間、というものを取り出し、私たちに差し出している。物語の中、そこで起こっている出来事は、たとえそれがテキストでも、立ち上がっていく空間がある…。あの時読んだ物語の空間を求めて、もう一度読み返してみよう、本書はそう語りかける。



フランス哲学の巨人、ミシェル・フーコーが来日時に、フランス文学者であり演出家でもある渡辺守章氏と行った傑作長編対談。演出家との対談ということで、あまり哲学にガチガチにならず、伸び伸びと連想を自由に飛ばしていくその対談は、フーコーの人となりや、彼の主著に挑む前の入門に持ってこいだ。

「演劇的なるものと権力的なるものの交錯を読み解く対話が、それ自体、演劇的な力をもって立ち現れる。自らを匿名化しようとしたフランスの哲学者がそれにもかかわらず捨てきれなかったフランボワイヤントな言葉に、フランス人よりも華麗なフランス語を操る日本の演出家の言葉が拮抗する。ミシェル・フーコーと渡邊守章の遭遇は、そういう稀有な出来事だった。フーコーを読み解く者は今も世界中にいる。だが、このようなフーコーとの対話は、当時も今もほとんど類例がない。この貴重な記録は、変貌の途上にあったフーコーの実像を示す興味深い内容に加え、自らを焼き尽くさんばかりの言葉の力によって、現代の読者をも圧倒するだろう。(浅田彰)」



吉田健一の最晩年の文明評論集。うねうねと迂回する、文章をしゃぶり尽くすような文章で語られていくのは、ホメロス、シェイクスピア、ワイルドの他、ナポレオン、清少納言、秀吉、と吉田健一にしては珍しいど直球の偉人もちらほら。物語と史実を織り交ぜ語り、「世界」とは何か、迫っていくその文章は、晩年のこのテクストが最も味わい深い。